防爆環境下におけるDCSのモバイル活用とその効果
モバイル技術の有用性と課題
操業環境におけるモバイル技術の有用性
デジタル技術が進化する中、産業分野でもシステムのモバイル化が急速に進んでいます。モバイル化の利点として、リアルタイムでのデータアクセスや、どこからでもシステムの操作と監視を行うことが可能となり、業務の効率性と生産性の大幅な向上が挙げられます。また、防爆環境下でも使えるタブレットやスマートフォンなどの登場により、化学産業の製造現場でも作業員は適切なタイミングで対応できるようになりました。これらのモバイルデバイスの活用は全体的な運用コストの削減だけでなく、安全性の向上にも寄与します。
現場でのモバイル活用の課題
従来の製造現場は、既存のDCSが固定された場所(制御室など)での操作を前提としているため、現場作業員がデータにアクセスするには制御室に戻る必要があり、非効率な作業となっています。この作業効率を上げるためには無線技術の導入が考えられますが、サイバーセキュリティ上の懸念から、慎重な検討が必要となります。また、DCSのモバイル化を実現するリモートデスクトッププロトコル(RDP)*は便利な一方、セキュリティの脆弱性がたびたび問題となる技術です。具体的にはブルートフォース攻撃やリモートコード実行によりシステムに不正アクセスされるリスクがあり、それらを防ぐためのサイバーセキュリティも合わせて検討する必要があります。そのため、製造現場における無線ネットワーク環境構築には、信頼性の高いサイバーセキュリティ対策と適切なアクセス権限の管理が求められます。
*リモートデスクトッププロトコル(RDP)
Windows標準機能のリモートデスクトッププロトコル(RDP)は、他のPCに搭載されたアプリケーション画面の閲覧と操作を可能にする技術です。DCSが稼働している製造現場でRDPを採用すると、遠隔地にある複数のクライアントから操作監視画面にアクセスすることが可能になります。